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Manifest Study

マニフェスト研究

10.水産政策

完全養殖と環境整備

完全養殖と環境整備

政策提言として

最近ではマグロやウナギといった絶滅も危惧されている水産物に対する完全養殖の研究と技術革新が進んでいますが、日本の食卓を守るために完全養殖に対する地方都市の取り組みにも注目が集まっています。

完全養殖技術については、海辺に近い自治体だけの問題ではなく、山間部で養殖されるエビやフグといった技術も少しずつですが確立されてきており、行政による養殖支援も必要となってきています。

完全養殖を行う利点としては、自然災害などでの漁獲量の増減に左右されずに食卓への供給を行える点と、海洋資源の枯渇を阻止することが出来る点、病気や寄生虫などがない安全な食料の供給を行える点です。

背景

  • 日本の食文化として魚介類の消費が多い
  • 海洋生物の乱獲による資源減少が懸念されている
  • 生食などで病気や寄生虫の危険性がある
  • 災害や漁獲高によって価格の変動が激しい

根本的な原因

  • 自然界からの漁獲で資源が減少する
  • 環境に左右され病気や寄生虫が蔓延する
  • 漁獲量の変化で供給が安定しない
  • 価格の変動で企業の売り上げや家計にも直撃する

質問と提言例

 作成中

養殖について

養殖するためには対象となる生物の生態を知る必要があり、安定した養殖技術の獲得までにはとても時間がかかります。

魚介類に関しては、卵や稚魚、稚貝から育てることが多いのですが、飼育親魚からの採卵と管理環境下での孵化を経た稚魚の質と量の確保が困難な二ホンウナギ・クロマグロ・ハマチなどの魚種の場合、自然界から稚魚をとらえて育てる「畜養」が行われています。

二ホンウナギやマグロ類では稚魚として用いる未成魚の捕獲行為が無制限に行われ、捕獲する行為自体が天然資源減少の要因と指摘されましたが、クロマグロに未成魚の捕獲制限が行われている。

◇養殖の目的

多くの場合、育てた生物自体を食用とすることが目的ですが、真珠のように生物の育成によって副次的に生産される物質を食用以外の用途とする場合もある一方、人間によって略奪、破壊された海洋環境を自然に返す手段の一つとする見解もあります。

◇養殖施設

魚が逃げ散ったりしないように管理して、給餌や漁獲を容易にするため、海の沿岸域や淡水の湖沼などに様々な施設が作られていますが、魚介類の種類に合わせて、海面生け簀や筏、養魚池などが使い分けられており、海水魚の一部は、海水の水質を保って内陸部で育てる閉鎖循環式陸上養殖が可能になっています。

◇養殖方式の種類

  • 海面養殖・・・海上に網で隔離した筏を設け飼育する
  • かけ流し式・・・水槽に海の水を大量に給排水し飼育する
  • 閉鎖循環式・・・水槽内の海水を濾過し飼育する

養殖の問題点

◇生産過剰

養殖技術が確立され、稚魚から成魚になるまでの歩留まりが向上すると、生産過剰になり成魚の市場価格が暴落してしまいますが、ある魚種が収益が高いと注目されると多くの養殖業者がその魚種を取り扱おうとするようになり、市場価格が低迷している間も長期間畜養することで餌代金も生じることから、安価で出荷せざるを得ない状況になります。

稚魚の確保に制約のある魚種の場合は生産量に一定のブレーキが効きますが、卵や幼生から養殖できる魚種の場合は、その歯止めが効かず生産過剰になってしまいます。

◇周辺の水質汚染

養殖は波や海流の穏やかな内湾で行われることが多く、海流による浄化作用が起きにくく、餌の過剰投与や過密養殖によって周辺の富栄養化や水質汚染が指摘されていますが、餌の改良、投餌技術の進歩、食べ残しによる汚染の少ない餌が用いられるようになってします。

◇品質への不信

日本の消費者には天然もの志向が極めて強く、「養殖物は何を食べさせているか分からない」という観念が支配的であり、抗生物質などの投与物への不信の根強くあります。

養殖業では餌の改良など食味の改良に取り組み品質の向上に努め、関係団体では消費者への広報活動を行っており、養殖業は「何を食べているか分からない天然物より、何の餌を食べさせているかはっきりしている養殖物の方が安心」であると主張しています。

◇天然資源の減少

完全養殖に成功している海生魚類は少なく、天然の未成魚を捕獲して養殖しているのが実態で、養殖用稚魚全てを人工的に供給し、自然界の資源減少に与していないと思われがちですが、実際にはマグロ類、ウナギ、ハマチなどは自然界から稚魚を捕獲して育てる畜養という手段で養殖しており、資源減少の要因として非難されています。

餌に使用しているマイワシも自然界から捕ったものであり、人間の食用としての利用よりも肥料や養殖の餌としての消費の方が多いという問題もあります。

◇遺伝的多様性が欠如した集団の形成

世代を重ねて交配していくことで、遺伝的多様性は薄れてしまい画一的な個体群が形成され、遺伝的な多様性に欠ける個体群は感染症に対する耐性が弱くなっている場合があり、感染症が蔓延しやすいです。

自然環境への放流後の環境対応力が薄れていくことが指摘されている一方、多様性が維持できている個体群であれば感染を免れ生存する個体があり、全滅の可能性を低くできます。

完全養殖とは

生物の誕生から次世代への継続というサイクルを全て人工飼育で実施することで、 魚類であれば、成魚から卵を採り人工孵化の後に成魚に育てて、さらに成長させた魚から卵を採って人工孵化させるというサイクルが出来る養殖を、完全養殖と言います。

ナマズ、サケ科、コイ科、マダイ、トラフグ、浅海性のエビなど、多くの食用となる種では技術は確立しており、完全養殖がおこなわれている一方、食用魚介類として馴染みのあるイカ、タコ、サンマ、イワシ、アジ、海生カニ、カキなどでは完全養殖は行われていません。

完全養殖は「産卵」「孵化」「稚魚育成」「性的成熟」まで全ての過程を最適条件に管理した環境下で行うもので、生物の生態と各過程を詳細に研究し、最適なエサ、水温、明るさなどの条件を見出す必要があり、実際に完全養殖を行おうとした場合、目的とする魚種の生態解明だけでなく、親魚の飼育と稚魚の生産までにかかる生産コストも重要で、生産コストの上乗せが容易なウナギやマグロでは技術開発に成功しているものの、サンマやイワシなどの安価な魚種では技術開発自体行われていません。

かつては不可能とされていたウナギなどの魚介類の完全養殖について、実験室レベルで成功しており、特にクロマグロは長い期間をかけて完全養殖を商業的に成り立たせていますので、今後の技術発展に関心が集まっています。

完全養殖は世代を重ねると、養殖しやすい特性を持つ遺伝集団が形成される反面、単一の形質を持つ遺伝的な多様性に欠ける集団となってしまい、環境ストレスに対する耐性や耐病性を低下させると共に、継代人工種苗が親魚となった自然界での再生産のサイクルが良好に機能しない原因となっている可能性があります。

遺伝的多様性を維持するために、養殖で育ったメスと野生のオスを交配させ、次世代の種苗とすることで遺伝的多様性の維持を図ることが可能です。

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