1. HOME
  2. ブログ
  3. 09.環境政策
  4. リサイクルの実態

Manifest Study

マニフェスト研究

09.環境政策

リサイクルの実態

リサイクルの実態‐環境政策

目次

政策提言として

日本ではプラスチックの分別回収が世界でもトップクラスに進んでおり、分別回収されたプラスチックはリサイクル率が84%という高さでリサイクルされている・・・ことになっていますが、実際には回収した7割のプラスチックを「燃やしている」事実を知っている人はとても少ないです。

一生懸命プラスチックを分別している住民にとっては、回収した廃プラを新しいプラスチック製品に生まれ変わっていると信じている人は多いと思いますが、リサイクルの実態は考えているものとはかけ離れているのが現状です。

現状のリサイクルの実態自体が問題であるわけではないですが、地域住民の考えとかけ離れていることが問題であり、正しい知識と情報を基にリサイクル事業を考えていくことが重要です。

背景

  • 回収した廃プラの利用について誤解がある
  • 再利用の実態が本来の意味する再利用ではない
  • リサイクル事業には補助金が出ている

根本的な原因

  • 回収した廃プラの処理の仕方を理解していない
  • 3Rやリサイクルの定義を理解していない
  • リサイクルしようとしている根本的な目的を理解していない

質問と提言例

 プラスチックごみについては、処理しきれない量のごみとして堆積していたり、海洋汚染の原因となっているなど、プラスチックごみの取り扱いには世界的な問題となっています。
 日本では、地域住民の協力もありプラスチックの回収は進み、84%というリサイクル率の高さは、世界の中でもトップクラスとなっており、プラスチックごみの対策は十分に進んでいるように感じますが、リサイクルの実態は地域住民が想像しているものとは大きくかけ離れているのではないでしょうか。
 リサイクルの種類のうち物から物への再利用する「マテリアルリサイクル」が23%、プラスチックを分子分解して素材に変える「ケミカルリサイクル」が4%、熱エネルギーとして利用する「サーマルリサイクル」が57%となっていますが、ケミカルリサイクルの4%については製鉄所で鉄鉱石と石炭と一緒に燃やしていること、さらには57%を占める「サーマルリサイクル」自体が生ごみなどと一緒に燃やすこととされており、資源を循環させるはずのリサイクルとはかけ離れている処理をされていると感じます。
 廃プラを燃やすこと自体は、ごみ焼却時の燃料の節約にも繋がっており資源の有効利用としてそれほど問題のない処理だとは思いますが、あたかもリサイクルという言葉とリサイクル率84%という言葉で資源の再生を想像させ、実態とかけ離れている現状を隠しているかのような対応については、問題があると認識せざるを得ません。
 さらに、回収した廃プラをただ燃やすことに利用するだけのリサイクル事業者に補助金を与えることは、地域住民を騙し利権を確保しているという錯覚を起こさせる事態にもなりかねないと感じます。
 そこで、地域におけるリサイクルの実態について正しい情報を開示するとともに、リサイクルをしようとしている本来の目的に沿っているかの検討と、今後の対応策について質問させていただきます。

廃プラによる海洋汚染

最近では地球全体の課題として認識された「海洋プラスチック問題」ですが、単純に海を漂うゴミ問題と思われがちですが、事態はもう少し深刻で、人間社会が輩出したペットボトルやビニール袋など様々なプラスチックごみ(廃プラ)が海に流れ出し、長距離・長期間を移動する中で粉々に砕け、1mmよりもさらに小さい「マイクロプラスチック」として、魚の体内に蓄積され、海洋深層水などの飲料水となって人間も飲み込んでいるという問題です。

プラスチックが漂うのは表層だけではなく、比重の重いプラスチックは海の底に沈み、比重の軽いプラスチックも微生物が付着して沈み、表層から海流によって海底に引き込まれ、深海に溜まっていきますので、とてつもない量のプラスチックが海を漂流していることになります。

マイクロプラスチックが発生するメカニズムは、完全に解明されているわけではありませんが、プラスチック自体は人間社会が作り出したものなので、プラスチックの排出を止めない限り海洋汚染は止まりません。

日本のプラスチック対策

日本では、プラスチックの分別回収率は世界でもトップクラスに進んでいるようですが、分別回収されたプラスチックのリサイクル率は84%という高さでリサイクルされていることになっています。

「されていることになっている」とは、コンビニやスーパーで出たプラスチックは多くの人が分別してプラスチックごみとして捨てるようになってきましたが、日本では回収したプラスチックの7割を「燃やして」おり、回収した廃プラが新しいプラスチック製品に生まれ変わっているわけではないのです。

では、リサイクル率84%が嘘であるかというと、決して嘘を言っているのではなく、リサイクルという言葉の範囲が重要であり、処理の仕方でリサイクルの種類が分類されています。

日本には「3R運動」と呼ばれている運動がありますが、プラスチックそのものを減らす「Reduce(リデュース)」、使い捨てるのではなく再利用する「Reuse(リユース)」、リサイクルをする「Recycle(リサイクル)」があるのですが、リサイクルの中にもさらに種類が存在します。

◇マテリアルリサイクル

ペットボトルごみからペットボトルに生まれ変わるとか、廃プラを駅ホームのベンチやバケツに生まれ変わるといった、物から物へ生まれ変わるリサイクルのことを「マテリアルリサイクル」と呼び、多くの人が想像しやすいリサイクルです。

マテリアルリサイクルの欠点は、リサイクルするたびにプラスチック分子が劣化してしまい、品質が悪く使い物にならなくてしまいます。

◇ケミカルリサイクル

マテリアルリサイクルのように品質の劣化に対する新技術として期待されているのが「ケミカルリサイクル」で、廃プラをひとまず分子に分解してからプラスチック素材に変えるもので、何度でも再生可能であることから理想的なリサイクルのように感じますが、分子分解する工程に大掛かりな施設が必要で、莫大な資金とエネルギーがかかってしまいます。

◇サーマルリサイクル

日本のリサイクル率84%のうち、ケミカルリサイクルは4%、マテリアルリサイクルが23%であり、残りの57%が「サーマルリサイクル」で処理されています。

サーマルというのは「熱の」という意味で、ペットボトルなどのプラスチックを焼却炉で燃やし、その熱をエネルギーとして回収する仕組みのことなのですが、回収された熱は火力発電や温水プールに利用されており、ごみを利用した火力発電を「ごみ発電」とも呼ばれています。

プラスチックはもともと原油を原料としているので、よく燃えて高熱を発生するため、生ごみなど水分の多いごみと一緒に燃やすことで、プラスチックは良い燃料となるのです。

日本のリサイクルの実態

ゴミ発電には廃プラの他にも廃材を燃料にするものもありますが、木材よりもプラスチックの方がよく燃えるので、日本のプラスチックのリサイクル率84%のうち57%が燃やされているという実態なのです。

さらに日本のリサイクル率の84%のうち4%にあたるケミカルリサイクルについても、実際に全てが「廃プラスチックを分子に分解してからプラスチック素材に変える」ということはなく、廃プラを製鉄所で鉄鉱石と石炭と一緒に燃やしているのですが、製鉄所で用いる石炭はエネルギー源ではなく酸化鉄を鉄に還元する役割を果たしているので、廃プラを混ぜることで消費する石炭の量が減る理由から、廃プラを還元剤として利用することが「ケミカルリサイクル」となっているらしいです。

リサイクルは「循環する」という意味がありますが、形状が変わったり用途の違う製品になること自体も正確にはリサイクルではないような気がするのに、プラスチックを熱エネルギーに変えることを「リサイクル」と呼べるのでしょうか。

海外には「サーマルリサイクル」という言葉はなく、「エネルギー回収」や「熱回収」と呼ばれる処理をされているのでリサイクルはされておらず、日本独自の呼び方でリサイクル率を約60%分水増しをしているのが実態なのです。

廃プラを燃やすこと自体は、生ごみと一緒に燃やすことでよく燃える燃料として利用することなので、利用方法としてはそれほど問題はないのですが、サーマルリサイクルとしてリサイクル率を上げている一番の問題は、リサイクル事業に多額の補助金が使われていることなのです。

リサイクルからリデュースへ

スターバックスやマクドナルドが、プラスチック製のストローやマドラーを廃止し、品質的にも価格的にも実用的になった紙製のストローに変えるということがありましたが、プラスチック製品そのものを減らすリデュースに当たります。

全てのプラスチック製品を紙製などに切り替えることは不可能に近いとは思いますが、少しずつでもプラスチック製品を減らしていくことが重要で、身近なところから活動を開始していきたいものです。

関連記事